久しぶりにミステリー小説を読もうと
裏表紙のあらすじを見ると、
「叙述トリック」「倒叙トリック」
「コージー・ミステリ」といった
専門用語が並んでいることがある。
「面白そう」という直感よりも先に、
「なんだか難しそう」という戸惑いが勝ってしまい、
そっと本を棚に戻してしまう。
そんな経験はないでしょうか。
せっかく楽しむための読書なのに、
見慣れない言葉のせいでテスト勉強のような
窮屈さを感じてしまうのは、
とてももったいない。
用語なんて、全部覚える必要はありません。
本を読む時間が限られている
大人にとって大切なのは、
マニアックな知識ではありません。
「今の疲労度でもスッと読めるか」
「今日はしっかり騙されたい気分か」という、
気持ちとの相性です。
ここでは、
そんな「今日の気分」にぴったりの一冊を
見つけるためのヒントとして、
16個のミステリー用語をピックアップしました。
最初から真面目に読まなくても大丈夫です。
気になった言葉があるか無いかを
確認するように眺めてみてください。
もっと細かな用語は、
ミステリーが面白くなる雑学32選で
調べられます。
犯人に近づく楽しさが見えてくる、最初の4つ

手がかりをたどる面白さがある「本格ミステリ」
犯人を当てることだけが、
本格ミステリの楽しさではありません。
置かれた手がかりを眺めながら、
「犯人は誰だろう」と
考える時間が面白いジャンルです。
少し頭を使いたい日に、よく合います。
難しそうなら、まずは短編集から
入ってください。
あとから効いてくる、小さなお約束「伏線」
読んでいる途中では何気なく見えていた言葉や
出来事が、あとで意味がわかるのが。
伏線です。
見抜けなかったとしても大丈夫です。
読み終えたあとに
「あれはこのためだったのか」と気づくのも、
ミステリーの醍醐味です。
少年漫画で、序盤の何気ないアイテムが
最終決戦でキーアイテムになるような、
あの胸のすく驚きと同じです。
「その時間、どこにいた?」から始まる「アリバイ」
事件が起きた時間に、その人が別の場所に
いたことを示す情報や状況です。
電車に乗った記録や店員の証言など、
地味な情報が大きな鍵になることもあります。
アリバイ崩しは、
派手な展開より、話を筋道立てて追う
面白さを味わいたい人に向いています。
閉ざされた場所の謎をほどく「密室トリック」
誰も出入りできないはずの部屋で、なぜ事件が起きたのか。
密室トリックでは、その「ありえない」をほどいていきます。
部屋の見取り図を想像したり、
時間のずれを考えたりするのが好きなら、
きっと楽しめます。
読んでいる自分の思い込みが、ふっと揺らぐ4つ

目線をそっと別の場所へ向ける「ミスリード」
作者は、読者の目を少しだけ
別の方向へ向けます。
それがミスリードです。
「敵の巧妙な陽動作戦に見事に引っかかり、
本命の標的から目を逸らされてしまった
主人公のような、そんな心地よい
悔しさを味わえます。」
文章の見え方が変わる「叙述トリック」
文章の書き方や視点によって、
読者の思い込みが静かにずらされる仕掛けです。
作品名を知ってしまうだけで
楽しみが減る場合もあるので、
ここでは詳しく触れません。
「第1話からずっと主人公側の視点だと
思って読んでいたものが、
実は宿敵側の視点だったと
終盤で気づかされるような感覚に似ています。」
最後に景色が反転する「どんでん返し」
終盤で、それまで信じていた人物や
出来事の見え方が大きく変わる展開です。
ただ驚かされるだけでなく、読み返すと納得できる。
その一段深い驚きがある作品は、
読後もしばらく頭に残ります。
強大な敵だと思っていた人物が、
実は主人公を陰から守っていたと分かった時のような、
あのカタルシスに似ています。
犯人当てに自分も参加する「読者への挑戦状」
「手がかりはそろいました。
あなたにも犯人が分かるはずです」と、
作者が読者へ推理を促す仕掛けです。
すべての本格ミステリにあるわけではありませんが、
「画面の向こう側のキャラクターが
突然こちらを振り向き、『あなたならどう解く?』と
直接語りかけてくるような、
あの胸が高鳴る演出そのものです。
今日はどんな気分で読みたい? 読後感から選ぶ4つ

大きな事件ではないから、心に入りやすい「日常の謎」
殺人事件ではなく、
「あの人はなぜ、
あの日だけ違う行動をしたのか」といった
身近な疑問を解いていく話です。
疲れている日でも作品の中に入りやすく、
読後に気持ちを
持っていかれすぎたくない人にも向いています。
後味のやさしさを選びたい日の「コージー・ミステリ」
コージーには、居心地がよい、
という意味があります。
町の空気や人間関係を味わいながら、
謎を楽しむタイプです。
殺人が出てくる作品もありますが、
陰惨さより「その世界にもう少しいたい」と
思える読後感が魅力です。
人の心の暗さまで見つめる「イヤミス」
人の悪意や、割り切れない気持ちが残る
ミステリーです。
怖い場面が多いとは限りませんが、
人間関係や社会の歪みなどで、
絶望感、やりきれなさを味わいた方に
向いてます。
元気な日に読むか、
あえて考え込みたい日に選ぶか。
気分で選ぶのがいいと思います。
事件の向こうに今の社会が見える「社会派ミステリ」
事件を追いながら、
家族、仕事、地域、格差など、私たちの
暮らしにもつながる問題を見つめる作品です。
読み終えたあと、犯人探しよりも
「90年代の傑作OVAや劇場版アニメで、
単なる悪の組織との戦いではなく、
社会システムそのものが生み出した
巨大な歪みや悲劇を突きつけられた時のような、
あの渋く、唸らされるような展開」が
好きな方にオススメです。
いつもの読み方を少し変えてくれる、もう4つ

語り手の言葉を、そのまま信じない「信頼できない語り手」
語り手の言葉を、そのまま信じてよいとは
限らないのがミステリーです。
ただ悪意があるとは限りません。
記憶違いかもしれないし、
本人なりの思い込みかもしれません。
違和感を感じたら、少し注意深く
読んでいく楽しさがあります。
逃げ場のない場所で、人間関係があぶり出される「クローズド・サークル」
王道中の王道。
本格ミステリといえば「クローズド・サークル」です。
孤島、
雪で閉ざされた山荘、
外へ出られない館。
限られた人だけがいる場所で、
次々と事件が起きる展開です。
逃げ場がないため登場人物たちの
関係性は否応なく濃密になり、
ページをめくる手が止まらなくなります。
まるで、広大な宇宙空間に
取り残された一隻の戦艦の中で、
未知の敵の脅威に怯えながら、
クルー同士の疑心暗鬼が極限まで深まっていくような……
あの息が詰まるほどのヒリヒリとした緊張感を
存分に味わえます。
犯人を知ったまま、追いつめられる過程を楽しむ「倒叙ミステリ」
物語の最初から、犯人の正体や犯行の様子を
読者にすべて見せてしまう形式です。
「最初から犯人が分かっているなら、何を楽しむの?」と
思われるかもしれませんが、醍醐味はそこから。
探偵役が一体どこから真相へと近づいていくのか、
そして完全犯罪を企てたはずの犯人が、
どこで致命的なミス(取りこぼし)をしてしまうのか。
そのジリジリとした攻防の過程を楽しむのです。
互いの手札を知り尽くした知将と知将が、
相手の心理を読み合いながら罠を張り合う、
熱い頭脳戦の漫画を読んでいるような興奮があります。
普通の「犯人当て」に少し疲れてしまった人は、
新鮮な気持ちで読めるはずです。
椅子に座ったまま、言葉だけで真相に届く「安楽椅子探偵」
探偵自身は事件現場をあちこち走り回ることなく、
部屋の椅子に座ったまま、
人づてに聞いた話や持ち込まれた資料の記述だけで
真相を論理的に組み立てていく形式です。
落ち着いた静かな空間で、
人の話をじっくりと聞き解いていくような、
優雅で知的な読み心地があります。
自らは決して前線に出ず、
薄暗い幕舎の奥で盤面を眺めるだけで
戦局を完全に支配してしまう、
圧倒的な切れ者軍師の采配を見ているような
シビれる格好良さがあります。
派手なアクションや展開よりも、
言葉の端々に隠された細かな手がかりを
じっくりと拾い集めたい気分の時にぴったりです。
気になった言葉から、次の一冊を選んでみる
犯人当てをしたいなら、
本格ミステリやアリバイもの。
驚きを味わいたいなら、
叙述トリックやどんでん返し。
今日は疲れているなら、
日常の謎やコージー・ミステリから。
用語は、今の自分に合う一冊を
探しやすくするキーワードです。
気になる言葉が一つでも見つかったら、
その気分を頼りに次の一冊を選んでみてください。
もっと寄り道したくなったら、「ミステリー用語32選」へ
「ギミックって何だろう」
「フーダニットとハウダニットの違いも知りたい」と
思ったら、こちらで拾い読みできます。
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