驚かせて終わり、ではなかった 。読み終えて、静かに余韻に浸る。
最初に「してやられた」と感じたのは、
伊坂幸太郎さんの作品でした。
エスパーが出てきたり、
殺し屋が飄々と日常を生きていたり。
設定だけ聞くと、少し奇抜に
思えるかもしれません。
正直、私も最初は「ついていけるだろうか」と
身構えていました。
でも読み進めるうちに、
そういう印象はどこかに消えている。
あちこちに張られていた伏線が、
最後にすっと、つながっていく。
その瞬間の気持ちよさに、
すっかりやられてしまったんです。
どんでん返しというのは、
驚かせて終わりのものだと思っていました。
でも本当に効くのは、驚いたあとに
「ああ、そういうことだったのか」と、
静かに腑に落ちる瞬間なのかもしれません。
この記事では、そんな感覚を教えてくれた
作家たちを、これまで当ブログで
紹介してきた中からまとめて
ご案内します。
100冊、読まなくていい 。 好きなところから開く見取り図
当ブログでこれまで一冊ずつ向き合ってきた
作家たちを、「どんでん返し」という
キーワードでつないだ案内です。
好きなところから開いてください。
- どんでん返しの名手たち
(作家別・4名。まずここから
読むのがおすすめです) - もっと読みたい人へ(幅を広げる作家たち)
- 受賞歴から選びたい人へ
- 読む前に知っておくと面白い用語
- 目で読むか、耳で聴くか
どんでん返しの名手たち 。1人ずつ、向き合ってきた4人
歌野晶午 序盤を読み進めれば、最高の読後感に変わる
正直に言うと、
代表作『葉桜の季節に君を想うということ』は、途中で読むのをやめかけました。
冒頭からしばらく、
これといった事件も起きないまま、
じれったい展開が続きます。
「これが日本屈指のトリックを仕込んだ
小説なのか」と、
半信半疑になるくらいでした。
でも、そこを乗り切った先に
待っているものは、
他のミステリーとは一線を画します。
読み終えたときの後味の良さは、
数あるどんでん返し小説の中でもダントツです。
気持ちが前向きになる、不思議な読後感。
歳を重ねた方ほど、きっと心に刺さる一冊です。
序盤の、あの展開に、どれだけ付き合えるか。
それだけが、この本の唯一のハードルです。

麻耶雄嵩 ミステリーの「お約束」を、涼しい顔で壊してくる
ミステリーのトリックは江戸川乱歩さんの時代で、
すでにあらかた出尽くしている、とよく言われます。
だから今の書き手たちは、トリックそのものより
「どう読者の心を誘導し、驚かせるか」という
、また別の次元で勝負している。
麻耶さんは、その中でも「特殊」というより
「発想そのものが根本的に違う」書き手だと感じています。
象徴的なのが、名探偵メルカトル鮎のシリーズです。
1作目であっさりと死んでしまうのに、
次の作品からは何事もなかったかのように、
また普通に登場する。
「名探偵は死なない」という読者側の思い込みごと、
涼しい顔で壊してくるんです。
好き嫌いというより、「これが理解できるかどうか」で
分かれる作家だと思います。


中山七里
一番好きなのは御子柴シリーズです。
弁護士ものなので、裁判シーンに入ると
一気に展開が速くなります。
新しい証拠や、隠されていた真実が
次々に出てくる。
まるで映画を観ているような、
怒涛の畳みかけです。
猟奇的な描写も出てきますが、
それが長く続かないので読んでいても疲れない。
一番「人に話したくなる」のは、スターシステムです。
古い作品から順番に読んでいると、
いつか読んだ別の物語にいた刑事が、
ふらりと顔を出してくれる。
(スターシステムとは:重要な人物がまたいで、
違う作品にも登場する仕組みです。)
作品同士がどこかでつながっている
感覚は、シリーズを追う楽しみを
何倍にもしてくれます。

伊坂幸太郎 奇抜な設定でも、伏線は最後まで手放さない
エスパーのような特殊な力や、
奇抜としか言いようのない
設定が出てくることがあります。
それでも作品全体は整っていて読みやすい。
伊坂さんの作品の不思議なところです。
張られた伏線が最後まで一本もこぼれない。
そして綺麗にオチへとつながっていきます。
会話のテンポや、
台詞のセンスのよさも、伊坂作品ならではだと
思います。
読み終えるころには心に残る一言に、
必ず出会えている。
作品をまたいで同じ人物がひょっこり顔を出す
「スターシステム」も、採用されています。
これだけ多くの読者に支持されてきた
書き手なのに、直木賞は獲っていません。
自ら「ノミネートしないでほしい」と
断った話は有名です。


もっと読みたい人へ 。ミステリーの 幅を広げる作家たち
4人の名手だけでは物足りない、
という方のために。
ここから先は、当ブログで紹介してきた
作家たちを、雰囲気の近さで3つに分けました。
厳密なジャンル分けというより、
「次に読むならどのあたりが自分に合いそうか」の目安として使ってください。
本格ミステリの書き手
論理を積み重ねて、
最後にすべてがかちりとはまるタイプです。
じっくり考えながら読みたい方に。

社会派・人間ドラマの書き手
謎解きと同じくらい、そこにいる人の事情に心が動かされるタイプです。
仕事や家族といった、こちらの生活と地続きの重みがあります。


海外ミステリの定番
国内の作家たちとは違う空気の、定番中の定番です。まだ手に取ったことがない方は、ここから海外ミステリーに触れてみるのもいいかもしれません。

受賞歴から選びたい人へ
「まず外れのないものが読みたい」という方には、
賞という物差しも一つの手がかりになります。
ここでは直木賞をはじめ、
当ブログでこれまで扱ってきた受賞作をまとめました。
直木賞受賞作家


本屋大賞・芥川賞など
→ 本屋大賞・直木賞・芥川賞・山本周五郎賞・山田風太郎賞・本格ミステリ大賞 → 【2020年本屋大賞】流浪の月 → 【芥川賞】人間を見つめる純文学

読む前に知っておくと面白い
どんでん返し、伏線、信頼できない語り手……
ミステリー特有の言葉は、知っているとそれだけで
読む楽しみが一段深くなります。
難しい理論書ではなく、日常語に訳した用語集を用意しました。


目で読むか、耳で聴くか
ここまで紹介した作品の多くは、Amazonオーディブルの聴き放題対象になっているものがあります(対象作品・条件は変動しますので、その都度公式サイトでご確認ください)。目で追うだけが読書ではありません。家事をしながら、歩きながら、耳で”読む”という選び方もあります。

まとめ ― 次はどの作家から?
ここまで、当ブログで紹介してきたどんでん返しの名手たちを、
まとめてみてきました。全部を一度に読む必要はありません。
気になった一冊を読んで下さい。
迷ったら、こんな選び方はいかがでしょう。
伊坂さんなら殺し屋シリーズ、
麻耶さんなら貴族探偵、
中山さんなら御子柴シリーズ、
歌野さんなら『葉桜の季節に君を想うということ』。
中山さん以外は、ふと開いたページの数行を読んだだけで
「あ、この人の文章だ」とわかるくらい、それぞれに独特の雰囲気があります。
(中山さんはご本人いわく、編集者さんの指示に忠実なタイプだそうです。
だからこそ、幅広い作品を安定して書けるのかもしれません)。
歳を重ねるほど、自分の思い込みは強くなっていくものです。
柔軟に読んでいるつもりでも、どこかで決めつけてしまう。
だからこそ、ミスリードにまんまと引っかかる。
若い頃よりもミステリーにハマリます。
誰かに話したくなったら、
SNSでつぶやいてみるのもいいと思います。

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