『サムライチャンプルー』、ひまわりは本当に匂ったのか? 探し物が幻でも、旅は無駄じゃない

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渡辺信一郎の作品に惹かれ観始めた『サムライチャンプルー』

『カウボーイビバップ』にハマった。
同じ監督が次に何を作ったのか。

気になるので調べて『サムライチャンプルー』を見はじめた。

前作であれだけ振り切ったものを見せてくれた人が、今度は何を見せてくれるのか。
楽しみでした。

江戸時代。ヒップホップ。

コイントスで行き先を決める、3人の旅。

予想外の始まり方でしたが、
その監督への信頼だけで、最後まで
観る気になっていました。
→ 以前、この監督の名前を別の記事にも書きました。

そもそも、渡辺信一郎という監督のことを知っていますか?

あらためて。

『カウボーイビバップ』も『サムライチャンプルー』も、 渡辺信一郎が手がけています。

2つを見比べると、これがまた、 まるで色合いの違う作品でして。

『カウボーイビバップ』の舞台は、
近未来の宇宙。
流れているのは、ジャズ。
シビアで大人びた空気。

過去に囚われた男の物語、
と言ってもいいかもしれません。

『サムライチャンプルー』の世界線は、江戸と
ヒップホップ。
同じ人の仕事とは、正直、思えませんでした。
当時では、かなり斬新でした。

実際この人は、 毎回、作風をがらりと
変えてきます。

『サムライチャンプルー』(2004年)
『スペース☆ダンディ』(2014年)、
『残響のテロル』(2014年)
『ブレードランナー ブラック アウト 2022』(2017年)
『LAZARUS ラザロ』(2025年)。

監督だったり原案だったり、
そのつど変わります。

ひとつの型に、収まらない。
そういう作り手なんです。

『ロードムービー』旅をするのは、こんな3人です

⚫︎ムゲンは、野獣のような男。
自己流の剣で、誰にでも噛みつきます。

⚫︎ジンは、その正反対。
物静かで、冷静な眼鏡の浪人。

この2人を旅に引き込んだのが、
⚫︎フウ。まだ、あどけなさの残る娘です。

喧嘩騒動が多く、
道中は、斬った張ったの大騒ぎ。

前半は笑ってしまう場面のほうが多いので、見やすいと思います。

荒っぽいのに、どこか明るい。
その手ざわりが、妙に心地よかったんです。

探していたのは、”匂うはずのない花”幻でした

旅には、目的がありました。

フウという少女が、
「ひまわりの匂いのするお侍さん」を
探している。

ムゲンとジンは、 成り行きで
その目的に付き合わされる形で、
腕っぷしだけを頼りに旅に出ます。

観ながら、ずっと引っかかってりますよね?

(ひまわりに匂いなんて、 あったっけ?)

ひまわりに、強い香りはない。
フウは最初から、存在しない匂いを追っていた

ひまわりは品種にもよるようですが、
人がはっきり嗅ぎ取れるほどの香りは、
基本的には持たない花なんだそうです。

だとすると。

フウは最初から、 存在しないものを、
何年も追いかけていたことになる。

記憶違いなのか。
幼い頃の思い出が、
都合よく作り替えられていたのか。

理由は分かりません。

大事なのは、ゴールそのものが、
最初から幻だったということです。

⚫︎けっこうはじめの頃に、ジンが、
ひまわりの匂いがしないことを、
突っ込んでいるので、裏テーマ扱いでした。

たどり着いた場所に、英雄はいませんでした 。 肩透かし、なのに清々しかった

2nd(後半)に入ると、良い感じに
心理描写が深くなっていきます。

(最終回)長い旅の果てに、
フウはとうとう、父親に会えます。

でも、そこにいたのは、
立派な侍でも、
強いボスでもありませんでした。

信仰を理由に幕府から追われ、
病に伏せ、ただ怯えながら
死を待つだけの、か弱い老人。

正直、肩透かしを喰らいました。
でも、なぜか、心に来るものがあります。

感動的な再会も、劇的な結末も
用意されていなる訳でもなく、
ロードムービーならでは、
沁みる感じがグッときます。

悲劇か喜劇かは、誰の目で見るか。人生は旅なんだと思えます。

ムゲンとジンも、似たようなものです。

ムゲンは、そもそも武士ですらない。
自己流の喧嘩腰の剣で生きています。

ジンは、恩師を斬って道場を出た、
本来なら許されないはずの男。

二人とも、忠義とか大義とか、
そういうものとは縁遠いところにいます。

最後、最強の刺客(刈屋景時)と斬り結んでも、
美しく散ったりはしません。

泥まみれで、無様でも、
とにかく生き延びることを選ぶ。

目的を果たしたあとは、
抱き合うでも、涙を流すでもなく、
人生を歩んでいきます。

三叉路で「じゃあな」と、あっさり別れる。

時代活劇じゃなく、ロードムービーなので
当時日本では人気が出にくかった
『サムライチャンプルー』

ただ、海外人気は高かった。

この作品自身も、長い旅の途中です。20年を経ても動きます(予定)

実はこの『サムライチャンプルー』
最初から広く愛された作品では、
なかったようです。

渡辺監督自身が、 ARBANという
メディアのインタビュー(2020年)で、
当時をこんなふうに振り返っています。

一部の熱心なファンには、深く刺さった。
けれど、当時のアニメ好きの多くには、
どうもうまく届かなかった、と。

その頃は、アニメを愛する層と、
ヒップホップを好む、やんちゃな層。に
分かれていて、この2つが、
なかなか噛み合わない時代でした。

その両方を、ひとつの器に混ぜた作品。
だから、どちらからも中途半端に見られた。
監督は、そんな趣旨のことを話しています。

局所的には、確かに刺さっていた。
でも、大きくは、広がりきらなかった。

そして、時は流れて2026年。

Netflixで実写版『ONE PIECE』を手がけた、
トゥモロー・スタジオという制作会社が、
この作品の実写化を進めている。
アメリカのVarietyが、2026年3月に
そう報じたのです。

制作陣が渡辺監督と会い、参加を打診。
監督も前向きに応じた、と伝えられています。

ただし、まだ企画の初期段階。
配信先も、放送の予定も、
今のところ決まってはいないようです。

本当に形になるのかは、 正直、
まだ分かりません。

それでも、楽しみです。

当時は届ききらなかったこの旅が、
20年以上の時を経て、 また新しい場所へ
歩き出そうとしている。

しかもHIPHOPの本場で撮り直されると
思うと胸が熱くなります。

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