【名著30選】蟹工船・著:小林多喜二

覚悟して読んでください。

昭和の日本の過酷な労働者たちの話でもあり、人権が守られていなかった日本で命を奪われた作家が残した名著:『蟹工船』

普段はビジネス・金融・自己啓発のジャンルを読んでいる僕が、今回はプロレタリア文学の最高峰!小林多喜二先生の”蟹工船”や母:セキさんとの絆・深い愛情で涙が溢れます。

 

 

日本のプロレタリア文学といえば小林多喜二の”蟹工船”

炭鉱

”蟹工船”は学校の授業で教わったぐらいで読んだことが無かったのですが、

発行部数ってご存じですか?

蟹工船は2017年までの間で176万8,000部刷です!(新潮社)

というのも2000年代はじめに蟹工船ブームを起こしたロングセラー本。

”蟹工船”をオーディオブックで聴いていきましょう。

書き出しから凄いのが”蟹工船”

「おい地獄さ行ぐんだで!」

引用参照:蟹工船

ハッピーエンド要素0だとわかる書き出しから始まるのが小林多喜二の蟹工船。

(次どうなるの?)っていう読者の気持ちなんか気にせず、「はい。ここから地獄が始まります。」と宣言されて読み進めていくのが蟹工船です。

希望なんか皆無です。

しっかり受けとめて読み進める書籍より、聴きやすいオーディオブックをおすすめします。

蟹工船を聴きやすくしているのがAmazonオーディブル

Amazonオーディブルの画面

ありがとう。音声ドラマ化。

ありがとう。豪華声優陣。

僕は正直書くと中村悠一さんの名前を見なかったら聴こうとは思いませんでした。

※中村悠一さんといえば呪術廻戦の五条悟の声の担当。

地獄絵図の労働環境の話を豪華声優陣とドラマ化の演出が、とても聴きやすい作品に仕上げています。

※読む覚悟が無い人はAmazonオーディブルをおすすめします。聴きやすいです。

2005年。蟹工船ブーム。えぐいぞ!ブラック企業!

2005年~2008年の間に蟹工船ブームが起き、発行部数が伸びました。

広島大学国語国文学会などが論文を発表するぐらいブームになっていました。

参考:小林多喜二「蟹工船」ブームの諸相 : 二〇〇〇年代後半の読者受容をめぐって

その当時の派遣社員やアルバイト雇用の労働条件と類似している部分も多く、虐げられた労働を感じている人たちに爆発的に売れていきました。

そんな時代背景もあって年間40万部を増刷されていた時期もあります。

「特別高等警察や治外法権の時代の人権や労働条件と類似している。」と著名な方々の対談がきっかけでブームに火が付いたようです。2000年の初期はブラック企業が労働者たちを精神的に追い詰めていた時代です。

そんな時代背景でブームになった蟹工船の作者小林多喜二は若くして命を絶たれます。多喜二と母のエピソードが切なくて母 (角川文庫) Kindle版”。著:三浦 綾子など書籍化されています。

目次

小林多喜二と小林セキの絆・深い愛情

母と子の絆

小林多喜二の母親の名前は小林セキ。

性格は明るく愛情が深い人でした。

セキさんの多喜二への愛情はとても深く、人の心を打つエピソードも数多く残っていて書籍化されています。

その中でも三浦綾子原作の小説「母」は2017年に映画化され、なんと小林セキさんを演じたのは日本アカデミー賞 最優秀主演女優賞の寺島しのぶさんでした。

ちょっと補足。

映画化されるぐらい感動的な原作を書かれた三浦綾子さんは北海道在住の作家で”氷点”も書かれました。※令和でも人気の”笑点”の名前の由来は、その当時のベストセラー本のタイトルの”氷点”の名前を頂いた話は有名ですね。

 

その中でも、母:小林セキと小林多喜二の絆を感じる最後の面会は涙が溢れてきます。

最後に会いたかったのは、お母さんだった。

蟹工船を発表したのち特別高等警察に捕まる多喜二。

デビュー作の”一九二八年三月一五日”の作中で描かれた特別高等警察の拷問シーンの描写が危険思想家とみなされ逮捕されます。

思想を変えるように特別高等警察にうながされます。

しかし小林多喜二は拒否し、そして獄中で拷問を受けます。

ここからは”日本のこころの教育”著:境野勝悟”の中で描かれている多喜二が拘束されている刑務所へ面会に行った母:小林セキさんと多喜二の絆・親子愛を紹介します。

2月20日に逮捕された多喜二は投獄されます。

そして拷問を受け、日に日に死に近づいていました。

ただ刑務所の中でも多喜二に同情的な声もあり、5分間だけなら面会に来てもよいと許されます。

ただちに小樽の母:小林セキさんに連絡がいきました。

ただ、ビンボウのどん底にいた小林セキさんは東京に向かうお金がありません。

「困ったときはお互い様」と、近所の人たちは困っている小林セキさんに汽車代を貸してくれます。

そして小林セキさんは吹雪く小樽から汽車を乗り継いでいくのですが一刻でも早く多喜二に会いたい母:セキさんは次の駅に汽車が停車していると聞くと、待ちきれずに先ゆく汽車を求めて雪の中を歩いていきます。

駅員さんの「危ないから止めなさい」と制止する声を聞かず、5キロ、6キロと次の駅へ歩いていきます。

生きている多喜二に会いたい一心で急ぐ、母。

そして刑務所にに着いた母:セキさんは多喜二に会います。

5分間だけの面会。

拷問により無残に変わり果てた多喜二は母親から見てもわからない姿になっていました。

特別高等警察につれられた多喜二は母親の前に座らされましたが、体を支えきれずに倒れます。

床に頭をつけた姿勢のまま多喜二は母親のもとへ進みます。

「お母さん、ごめんなさい。」としか言わず涙が止まりません。

そして母:セキさんも「たきじーッ」と泣き叫んだきり、もう何も話せなくなります。

二人が泣きながら鉄格子からさし出した手を取り合っている間に、たった5分の面会時間が1分、2分、3分と過ぎていきす。

その姿を見ていた特別高等警察も見るに見かねて、「お母さん、お母さん。しっかりしてください。あと2分ですよ。何か言ってやってください」と伝えます。

それを聞いた母:セキさんはハッと我に返り、残りの2分のあいだ多喜二に、繰り返し繰り返し伝えます。

「多喜二ッ。おまえの書いたものは一つも間違っておらんぞーッ。お母ちゃんはね、おまえを信じとるよーッ。」と言い続け、そして面会の時間は終わりました。

後日。生き絶え絶えの多喜二が最後の力を振り絞って言った言葉が胸を打ちます。

「待ってください、待ってください。私はもうあなたの鞭をもらわなくても死にます。
この数か月間、あなた方はみんなで寄ってたかって、私を地獄へ落とそうとしましたが、遺憾ながら私は地獄へは落ちません。
なぜならば、母が、おまえの書いた小説は一つも間違っていないと、私を信じてくれた。
むかしから母親に信じてもらった人間は必ず天国へ行くという言い伝えがあります。母は私の太陽です。その母が、この私を信じてくれました。

だから、私は、必ず、天国へ行きます。」

引用参照:”日本のこころの教育”著:境野勝悟”

 

まとめ

小林多喜二は、今、なお日本人の心の中で生き続けています。

映画「母 小林多喜二の母の物語」は2017年に上映されていて、”スラよみ!現代語訳名作シリーズ”蟹工船も発行されていて、読みやすい解説付きの本になって出版されています。

日本のプロレタリア文学を代表する作家の小林多喜二や、蟹工船に興味を持たれた方におすすするのは。

  • 聴きやすいAmazonオーディブルで蟹工船を聴く
  • ”スラよみ!現代語訳名作シリーズ”蟹工船で読む。
  • 秋田弁で描かれる生々しい”蟹工船”の世界を読む。
  • 多喜二と母の絆を”日本のこころの教育”著:境野勝悟”で読む

日本のこころの教育では語源も深堀りされていてお母さん⇒太陽を表す、お日身(カミ)さんと書いています。

だから多喜二は最後の言葉で母親のことを私の太陽と言っていたのですね。

語源を知ると日本語は深いです。

 

絆と言えば感動して涙があふれた”流浪の月”著:凪良 ゆうもおすすめです。

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